平成28年度修了証書・卒業証書授与式告辞

 菜の花や水仙の黄色や白が上総の春を彩(いろど)る季節となりました。本日、ここに、専攻科修了生25名に修了証書を、準学士課程卒業生175名に卒業証書を授与いたしました。修了生の中には台湾より1名、卒業生の中にはマレーシアより3名、カンボジアより1名、計5名の外国人留学生も含まれています。また、専攻科修了生には学位授与機構より特例適用認定専攻科として学士(工学)の学位も授与されました。修了生並びに卒業生の皆さん、誠におめでとうございます。本校の教職員一同、心からお祝い申し上げます。ご列席のご家族や関係の方々にも心からお慶び申し上げます。さらに、ご多忙の中ご臨席を賜りましたご来賓の名誉教授、同窓会、後援会の役員各位にも、これまでのご指導、ご支援を深く感謝申し上げます。

 学生諸君、5年間あるいは7年間にわたる厳しい勉学や研究によく耐えてくれました。木更津高専の創設以来これまでの卒業生は6800名を超え、また専攻科修了生は460名余りになり、国内外の様々な領域で幅広く活躍しておりますが、諸君はこれに続くことになります。

 本日の式典を終えて、諸君の半数近くは直ちに実社会に門出します。また半数以上は本校専攻科入学や大学への編入、大学院入学などでさらに勉学と研究を続け、その後、実社会に出ることになります。いずれの場合においても、これから諸君には様々な人生が待ち受けています。
 近年の我が国の大学など高等教育体系においては、いわゆる「高学歴」人材の「低学力化」の問題、つまり学生の基礎学力の低下が深刻な問題となってきています。本校の卒業生ならば多くの人がクリアしてきた「ラプラス変換」などの関数論はおろか、少し複雑な代数演算さえできない工学系大学の卒業生の存在などは、この一例であります。この嘆かわしい状況に対し、当然修めるべき教養や理工学の基礎知識に加えて、産業界や政府からも、日本の若者が高等教育において身につけてほしい「社会人基礎力」が提言されています。そのなかで主体性、問題発見力などいくつかの能力要素とともに挙げられた重要な「三つの能力」に「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」があります。これらは典型的に国際社会の中で日本の若い学生諸君に不足している力と言えましょう。特に「前に踏み出す力」を駆動する大きな要素は、力強い手足、つまり「理工学的筋力」であり、その筋力が、不可能と思われるものも可能とする一歩を生み出すのです。
 いま、本校の教育課程を卒業・修了した諸君は、数学や物理学や専門の学理に対する知識や、語学等を含む教養力とあわせて、本校の各学科や専攻の厳しい演習・実習などを行い、多くのレポートを提出し、一般特別研究、卒業研究、専攻科特別研究などをクリアし、「前に踏み出す力」を身につけ、さらにロボコン、プロコン、サイエンス・インカレなど様々なコンテストや国内外の学会・講演会などに参加して、「考え抜く力」と「チームで働く力」を蓄えて、一般の大学など高等教育機関の卒業生に比較してはるかに力強い手足、すなわち実践的な「理工学的筋力」を鍛えてきました。これから皆さんが、不十分でも構わずに外国語を使って外国の人々とコミュニケーションをとるちょっとした勇気を持てば、理工学的筋力である数学や物理学の式、化学式、設計図面や加工製作法、実際の製作物、プログラムや回路図・設計書の国際共通性と併せて、多様な国々の人と連携・共同して、仕事を進めることが可能となります。外国語については、完璧な文法英語に心を砕くよりも、多く聞き、多く会話し、多く読み、多く書くことが一番です。何よりも外国の友人を多く作ること、いろいろな話を聞いて、話して、間違ったら直してもらい、読んで調べて自分の身につけてゆけば、実力は後からついてきます。

 世界はいまも常に動いています。木更津高専は今年創立50周年を迎えますが、その当時の1967年に、米国では初めて異人種間の婚姻の禁止法律が違憲であるとの最高裁判決が出ました。つまり僅(わず)か50年前には、アメリカ合衆国の州によってはそれまで白人と黒人などの人たちが結婚すると罪になる状況があったのです。その判決への議論の緒(いとぐち)となったのはJ.F.ケネディ一家の若いロバート・ケネディ司法長官でした。それは決して歴史の教科書にあるような古い昔の出来事ではないのです。今、皆さんが当然のごとく感じているいろいろな制度や社会、法律などは現在も動いています。いま盛んに言われている我が国のグローバル化の流れも、欧州や米国の政治変化を契機に大きく変わってゆくかもしれません。しかし、その変動する現在や未来社会に対し、私たちや皆さんが拠り所とするものは、まさに本校で教育された科学的・理工学的知識と考え方、普遍的な人類・人間社会としての良識およびバランス感覚です。情報化社会ではありますが、SNS、ツイッターなどの限られたコミュニティ内のおしゃべりや知識・常識は、その膨大な情報量の可能性に比して、まだまだ拠り所としては不十分で注意が必要です。

 今年度より本校図書館に展示してある、多くの素晴らしい書をご寄贈いただいた書道家の田村心宰先生から、良い言葉をいただいておりますので、その言葉を卒業・修了する諸君に贈りたいと思います。それは
「明日死ぬかのように(現在を)生きよ、永遠に生きるかのように学べ」
という言葉であります。
 これはMohandas Karamchand Gandhi、インドの民族運動指導者・宗教家・政治家として有名なマハトマ・ガンディーの言葉として有名であります。悔いが残らぬよう1日1日を精一杯生き、最後の瞬間まで学び続けよという言葉で、同様の名言は歴史が古く、ラテン語でも表現されています。おそらくガンディーは古今東西の事柄を学ぶ中でこの言葉を咀嚼したのでありましょう。言葉の順序は逆ですが、この言葉も皆さんにお贈りしたいと思います。
 “Disce quasi semper victurus, vive quasi cras moriturus”
「永遠に生きるかのごとく学び、明日死ぬかのごとく今を生きよ」

 諸君の晴れの門出を心から祝福すると共に、元気にたくましくそれぞれの人生を切り開き、家族や友人や仲間を大切にし、その結果が日本や世界の明るい未来に繋がることを祈念して、贈る言葉といたします。修了・卒業される皆さん誠におめでとうございます。

                                  2017年(平成29年)3月17日
                                  木更津工業高等専門学校 校長
                                           前野 一夫

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