平成26年度修了証書・卒業証書授与式告辞

平成26年度修了証書・卒業証書授与式告辞

 菜の花が咲き始め、本格的な春が感じられる頃となりました。本日、ここに、専攻科修了生26名に修了証書を、準学士課程卒業生 173名に卒業証書を授与いたしました。 卒業生の中には3名の外国人留学生も含まれています。また、専攻科修了生には学士(工学)の学位も授与されました。修了生並びに卒業生の皆さん、誠におめでとうございます。本校の教職員一同、心からお祝い申し上げます。ご列席のご家族や関係の方々にも心からお慶び申し上げます。さらに、ご多忙の中ご臨席を賜りましたご来賓の工藤前校長、名誉教授、同窓会、後援会の役員の皆様にも、これまでのご指導、ご支援を深く感謝申し上げます。

 学生諸君、5年間あるいは7年間にわたる厳しい勉学によく耐えてくれました。木更津高専の創設以来これまでの卒業生は6400名余り、また、専攻科修了生は400名余りになり、国内外の様々な領域で幅広く活躍しておりますが、諸君はこれに続くことになります。

 本日の式典を終えて、諸君の約半数は直ちに実社会に門出します。また約半数は本校専攻科や大学、大学院などでさらに勉学と研究を続け、その後、実社会に出ることになります。いずれの場合においても、これから諸君には様々な人生が待ち受けています。諸君が在学した期間中の2011年には、東日本大震災と原発事故の複合大災害が発生し、被災地はもとより私たちの生活においても様々な困難がありました。また、大自然の威力の前には、科学技術や人間生活がいかに弱いものであるかを痛感しました。一方、同時に、人間として、人と喜びや痛みを分かち合うことの大切さも知ったことと思います。この大震災で被災した三陸地方に昔から伝わる「まなこ臆病、手は鬼に」という言葉があります。これは、大変な場面では、見て考えていると怖くてどうしようかと思案にくれてしまい行動できなくなってしまうけれど、まず手足を動かして身近なところから一つ一つ具体的に作業を始めることが大事で、そこから不可能なことも可能になるという意味であります。

 近年の大学をはじめとする高等教育において、少子化と一般的な進学率の上昇に伴い学生の基礎学力の低下が深刻な問題となってきていますが、これに対し産業界などの意見を反映して経済産業省から、日本の若者が高等教育において身につけてほしい「社会人基礎力」が提言されています。そのなかで主体性、問題発見力などいくつかの能力要素とともに挙げられているうち、最も重要な「3つの能力」に「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」があります。これらは特に、我が国がこれから生きて行くために必要な「日本社会のグローバル化」にそれぞれが対応できるための重要な要素となります。特に前に踏み出す力を駆動する大きな要素となるものは、力強い手足であり、その手足の能力が不可能と思われるものも可能とする一歩を踏み出す力を生み出すのです。

 いま、本校の教育課程を終えた諸君は、数学や物理学や専門の学理に対する知識や、語学等を含む教養力とあわせて、本校の各学科や専攻の厳しい演習・実習などを実施して多数のレポートを提出し、一般特別研究、卒業研究、専攻科特別研究などをクリアし、「考え抜く力」と「チームで働く力」を蓄えて、一般の大学などの高等教育機関卒業生と比較してはるかに力強い工学としての実践的筋力・手足を鍛えてきました。

 これからの諸君の人生においては、難しく、不可能と思われることが時々あると思いますが、まずは本校で鍛えた強い手と足で前にでる一歩を踏み出して見てください。まさに「まなこ臆病」に対する「手は鬼に」となることが可能です。また、そのことは世界的な共通点を持っており、英語やドイツ語、中国語などを使って外国の人々とコミュニケーションをとるちょっとした度胸と勇気を持てば、強い手や足である数学や物理の数式・化学式、工学的な図面や加工製作法、現実の製作物、プログラムや回路図・設計書の万国共通性と併せて、多様な国々の人と共同して、色々な仕事を達成することが可能となります。

 実業界や産業界のトップの方々には三現主義という言葉があります。三現とは現場・現物・現況であり、仕事をする上で大事な立脚点を示す言葉です。つねに現場を踏まえ、現物に基づき、現況を深く把握して行動する。これらはとても重要で、私も心に常にとどめている言葉ですが、本校を修了・卒業する諸君たちには、さらに進めて「工学三現三理」という言葉を私より送りたいと思います。三理とは理論・理解・理想であり、三現主義のみでは、ともすれば現状に埋没し、人間社会や国際的な状況の広く遠い展望を見通すことが難しいと考えてこれらの言葉を加えました。

 どうか諸君には様々な状況で現場・現物・現況を深く見てそれに立脚しながらも、常に理論・理解・理想の三理を忘れることなく、「手は鬼に」なるよう、まずは前に一歩を踏み出して行って欲しいと思います。諸君の晴れの門出を心から祝福すると共に、諸君が元気にたくましく自身の人生を切り開き、家族や友人や仲間を大切にし、その結果が日本や世界の明るい未来に繋がることを祈念して、贈る言葉といたします。

2015年(平成27年)3月20日
木更津工業高等専門学校長
前野 一夫

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