平成27年度修了証書・卒業証書授与式告辞

 菜の花とミモザの黄色が上総の春を彩(いろど)る季節となりました。本日、ここに、専攻科修了生36名に修了証書を、準学士課程卒業生189名に卒業証書を授与いたしました。卒業生の中にはマレーシアより2名、エチオピアより1名、計3名の外国人留学生も含まれています。また、専攻科修了生には学位授与機構より特例適用専攻科として学士(工学)の学位も授与されました。修了生並びに卒業生の皆さん、誠におめでとうございます。本校の教職員一同、心からお祝い申し上げます。ご列席のご家族や関係の方々にも心からお慶び申し上げます。さらに、ご多忙の中ご臨席を賜りましたご来賓の工藤前校長、元教授、同窓会、後援会の役員各位にも、これまでのご指導、ご支援を深く感謝申し上げます。

 学生諸君、5年間あるいは7年間にわたる厳しい勉学と研究によく耐えてくれました。木更津高専の創設以来これまでの卒業生は6600名余り、また専攻科修了生は430名余りになり、国内外の様々な領域で幅広く活躍しておりますが、諸君はこれに続くことになります。

 本日の式典を終えて、諸君の約半数は直ちに実社会に門出します。また約半数は本校専攻科入学や大学への編入、大学院入学などでさらに勉学と研究を続け、その後、実社会に出ることになります。いずれの場合においても、これから諸君には様々な人生が待ち受けています。

 近年の我が国の大学など高等教育体系においては、少子化と一般的な進学率の上昇に伴い、いわゆる「高学歴」人材の「低学力化」の問題、つまり学生の基礎学力の低下が深刻な問題となってきています。本校の卒業生ならば殆(ほとん)どの人がカバーしてきた「複素関数」や「ラプラス変換」などの関数論はおろか、因数分解や通分など、ちょっと複雑な四則演算さえできない工学系大学の卒業生の存在などは、この一例であります。アメリカや我が国で顕在化した、この危機的な状況に対し、当然修めるべき教養と理工学の基礎知識に加えて、産業界などの意見を反映して、経済産業省から、日本の若者が高等教育において身につけてほしい「社会人基礎力」が提言されています。そのなかで主体性、問題発見力などいくつかの能力要素とともに挙げられた最も重要な「三つの能力」に「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」があります。これらは特に、我が国がこれから生きて行くために必要な「日本社会のグローバル化」に個々人が対応できるための重要な要素となります。特に前に踏み出す力を駆動する大きな要素は、力強い手足、つまり「理工学的筋力」であり、その理工学筋力が、不可能と思われるものも可能とする一歩を生み出すのです。
 
 いま、本校の教育課程を修了した諸君は、数学や物理学や専門の学理に対する知識や、語学等を含む教養力とあわせて、本校の各学科や専攻の厳しい演習・実習などを実践して多くのレポートを提出し、3年次の一般特別研究、5年次の卒業研究、専攻科の特別研究などをクリアし、「前に踏み出す力」を身につけ、さらにロボコン、デザコン、サイエンス・インカレなど様々なコンテストや国内外の学会・講演会などに参加して、「考え抜く力」と「チームで働く力」を蓄えて、一般の大学など高等教育機関の卒業生に比較してはるかに力強い手足、すなわち理工学的筋力・実践的筋力を鍛えてきました。

 これからの諸君の人生においては、難しく、不可能と思われることが屢々(しばしば)あると思いますが、まずは本校で鍛えた強い手足で前にでる一歩を踏み出して見てください。この理工学的筋力や実践的筋力は世界的な共通点を多く持っており、国が異なってもかなり話が通じるのです。つまり、英語やドイツ語、中国語などを使って外国の人々とコミュニケーションをとるちょっとした度胸と勇気を持てば、理工学的筋力である数学や物理学の数式・化学式、工学的図面や加工製作法、現実の製作物、プログラムや回路図・設計書の万国共通性と併せて、多様な国々の人と連携・共同して、様々な仕事を実施することが可能となります。また、グローバル社会において外国語の活用は必需品となる訳ですが、完璧な文法英語に心を砕くよりも、多く聞き、多く会話し、多く読み、多く書くことが一番です。何よりも外国の友人を多く作ること、沢山いろいろな話を聞いて、話して、言い間違ったら直してもらい、読んで調べて自分の身につけることが肝要です。

 皆さんの修了・卒業にあたり、私は本校の新しい標語として、今年も目指したい理工学の「三現三理」という言葉を贈りたいと思います。三現とは現場・現物・現況であり、仕事をする上で大事な立脚点を示す言葉です。三理とは理論・理解・理想であります。どうか本校を巣立つ諸君には、様々な状況で現場・現物・現況の三現に深く立脚しながらも、常に理論・理解・理想の三理を忘れることなく、現状に埋没せず、人間社会や国際的な状況の広く遠い展望を見通し、躊躇する場面があっても、まずは前に一歩を踏み出して行って欲しいと思います。諸君の晴れの門出を心から祝福すると共に、諸君が元気にたくましく自身の人生を切り開き、家族や友人や仲間を大切にし、その結果が日本や世界の明るい未来に繋がることを祈念して、贈る言葉といたします。

2016年(平成28年)3月18日
木更津工業高等専門学校 校長
前野 一夫

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