平成28年度入学式告辞

 満開の桜が枝々に美しく、道に沈丁花が馥郁(ふくいく)と香る頃となりました。新入生の皆さん、木更津工業高等専門学校へようこそ。本日、ここに専攻科生34名、準学士課程生210名、計244名をお迎えいたします。栄えあるご入学まことにおめでとうございます。本校の在学生、教職員とともに、心から皆さんを歓迎します。また、本日ご列席のご家族の皆様にも、心よりお喜び申し上げます。さらに本日は、お忙しい中、後援会役員の皆様をはじめ各方面から多くのご来賓の方々にご臨席頂いております。教職員一同、厚く御礼申し上げます。

 今春の新入生の中には、転入学生1名、並びにモンゴルから国費2名、マレーシアから政府派遣4名の留学生もおり、準学士課程の3年次に編入学いたします。

 高等専門学校は、中学校卒業後から5年一貫の準学士課程と、さらに2年間の専攻科から成り、実践的、創造的かつ国際的に活躍する高度な専門技術者の育成を目指した教育を行います。準学士課程では、一般教育と専門の工学教育を組み合わせ、学理的な座学教育と共に実験や実習・演習を重視した実践的な教育を進めます。専攻科では、さらに高度な専門教育と研究・国際的視野の獲得を実行し、学位授与機構の認める特例適用専攻科として、7年一貫教育課程のもとにJABEEでも保証される、大学卒業と同じ学士(工学)の学位を取得できることになります。木更津高専からは、昭和42年の創立以来、現在の5学科と専攻科体制までを含め7300名余りの修了生・卒業生が世に出ており、多くの優れた人材が、日本や海外の様々な分野の産業や地域社会で広く活躍しています。これは本校の大きな誇りとするところです。

 さて、中学校を卒業したばかりの準学士課程の新入生諸君にお伝えします。高等専門学校は、低学年では、高等学校と似た所がありますが、全体としては高校と大学の両方の性格を併せ持った学校と言えます。我が国の高等専門学校はカレッジとして大学・短大と同じ高等教育機関に位置づけられており、諸君はこれから「生徒」ではなく「学生」と呼ばれることになります。

 4月より、英語、国語、歴史や法律・経済などの一般教養と、数学、物理、化学などの自然科学や理工学の基礎、さらに機械、電気、情報、建設土木など各学科の工学的専門分野を5年かけて学びます。この5年一貫という期間は、大学受験で中断されることがなく、伸び伸びと本格的な勉学や課外活動に取り組めるものですが、その半面、受験などの節目の課題がないことで気が弛(ゆる)み、惰性に流される恐れもあります。ですから、皆さんには、将来の進路について考え、しっかりした目標を持ち、厳しく生活を自己管理して、悔いのない毎日を送って下さい。

 一般的で表層的な話を鵜呑みにせず。ものごとを深く見て、深く読み、深く学ぶこと。様々な現象の背後にある基礎や学理を充分に勉強し理解してください。また、ものづくりを含む実験、実習・演習などにも積極的に取り組んで、チームとして互いに質問し教えあうことも学んでください。一般的な高校教育では受験勉強など答えのある問題に取り組むことが主体となりますが、本校では、カレッジの「学生」として、決まった答えのない問題に取り組むことも多くあり、持てる力の総てを用いて自ら様々な方法で解決の道を探る必要があります。 

 高専の学生生活は、一人一人にとって、今までの中学校と大きく異なり、何かととまどうこともあるでしょう。諸君が木更津で学ぶ期間は、自ら求め考え、行動し、責任を持つ「大人」へと成長する、人間形成の極めて重要な時期であります。時には大きな挫折や悩みを経験することもあると思います。しかし、諸君は試験に合格し本校に在籍することを認められ、選抜された立場であることを自覚し、他の人の意見を良く聞き、友人や先輩、先生方と相談し、各自がそれぞれ努力精進して、たくましく壁を乗り越え前途を切り開いて欲しいと思います。

 特に、学寮に入った皆さんは、親元を離れ生活面の変化も大きいことでしょう。皆さんの入学後、卒業までの期間は、柔軟な感性を持ち、心身ともに急速に成長する時です。どうか一日も早く自立的な共同生活・学校生活に慣れ、学校や寮、あるいはクラスの仲間と友達になってください。私たち教職員や上級生も、全力で優しく皆さんを応援します。分からないこと、不安に思うことがあったら、何でも私たちに相談してください。自分一人で考え込まず、ほかの人に相談し相談されることは人生の必需品です。多少の失敗は後からいくらでも取り戻せます。何事にも前向きに挑戦してください。

 木更津高専の教育方針は、第一に「人間形成」すなわち人間としての力の育成、第二に「専門の科学技術の修得」、第三に「心身の鍛練」すなわち健康な心と体の育成の三つの柱から成っています。この教育方針のもと、学生諸君は、日々の授業や予習復習、実験やレポート提出などの学業に励んでいただきます。また同時に、学園祭や体育祭、合宿研修など様々な学校行事に参加し、チームワークの重要性なども学んで下さい。そして、スポーツや文化系の課外活動にも、積極的に取り組んで欲しいと思います。こうした課外活動の成果を競い合う学校外の大会として、高専体育大会、高専ロボットコンテストやプログラミングコンテスト、デザインコンテスト、サイエンスインカレなど様々なものがあります。また、本校と外国の大学等との協定に基づき、台湾やドイツ、シンガポール、マレーシアなどの海外研修に参加する機会もあります。学生諸君がこれら様々な課外活動や国際交流活動に取り組むことは、一人一人の可能性を広げるばかりでなく、学校全体を力強くすることにもなります。

 入学した諸君の世界は、家族や友人、学校などの日本語を基盤とする身近な日常から、これからは英語を共通に用いあう国際的な技術科学・工学の世界へ急速に広がります。工学の基礎を勉強するとともに、どうかひるむことなく楽しんで英語の世界に飛び込み、グローバルな環境で多くの人々と繋がり協力や競争をすることも経験してください。

 入学に際して、皆さんに、まずお願いしておきたいことがあります。それは、最近の情報化社会における急速な状況の変化に正しく対応してほしいということです。つまり、入学した皆さんのかなりの割合の人がスマホやパソコンを所有し利用して、様々な形で外の世界とつながっている訳ですが、スマホの操作やLINE・SNSの使い方などは友人と情報交換してしっかり覚えて行く割には、若い青少年である皆さんが、どのような法律によって保護されているのか、またどのような行動が法律的にいけないことなのか、どのような責任があるかなどについては、ほぼ全くと言っていいほど無知の状態のままで、年月と状況がどんどん進んで行くことにもっと危機感を持っていただきたいということです。皆さんがこれから本校で学ぶことは、皆さんの日常生活と直結しているのだと意識して下さい。さらに、皆さんの学生生活において、デジタル・ITの世界、アナログの世界、現実の世界とのバランスを上手に取って欲しいと言うことです。ゲームに代表されるようなスマホなどで経験するデジタルの仮想世界と、日常の現実世界を正しく峻別し、時間的にも意識的にも調和を取って下さい。それにはまず普通の本を沢山読むことであります。本校の図書館も大いに利用し、様々な書籍に親しんで下さい。「我が人生の糧となる本に出会った」とか「師となる人との出会い」と言う言葉はありますが、「ツイッターやスマホで師となる人や文章に出会った」は残念ながらまだ一般的ではないようですし、インターネットでの会話と言葉が相手に与える影響の評価すら科学的に実証解明されていません。ITの世界は未だ発展途上でまさに玉石混淆であることを常に心にとどめておいて下さい。

 新入生諸君、今日から、良き友人を数多く作り、素晴らしい学生生活を築き、高専時代を人生における光り輝く一ページとして下さい。あらためて、皆さんの入学を一同で歓迎して、お祝いの言葉といたします。

2016年(平成28年)4月5日
木更津工業高等専門学校長
前野 一夫

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